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『月の征服』の感想

ライターの岡村詩野さんと京都livehouse nano店長/ボロフェスタ主宰のモグラさんに

素晴らしいコメントをいただきました。感謝を込めてここに掲載させていただきます。

サーフロック・スタイル「カーテン」やチャック・ベリー調ロックンロール「神宮丸太町に特急止めろ」を聴くと、このバンドのリーダーがいかに無邪気なロック・ロマンティストであるかに打ちのめされる。一方、「やさしい夜」や「首ったけ」といった曲からはURCやベルウッド周辺のフォーク・レジェンドへのリスペクトも漂ってくる。でも、仕上がりはエレクトロニカやヒップホップを通過した耳で音処理をしたような感じ。ファーストは一人で録音してたけど、今度はバンドでレコーディングしたんだって? ハハハハ、ハレルヤ! 佐藤拓朗と京都の愉快な仲間たちに幸多からんことを!

ーー岡村詩野

全部自分の視点からの物語。なんなら部屋でひとりで妄想中。そこには誰もいないし四方は壁。
想像の中の風景は無限大に広がって、色も鮮やかだし、その中に登場する自分以外の人物の表情まで豊か。水の音も聞こえるし、太陽の温かみ、頬にあたる風の感触まで。

 ここで見逃しちゃいけないのが、これらを、聴き手にまでしっかり想像させる音が構築されてるってこと。
何の気を衒うこともなく、何の人気を狙うでもなく、実体験があるかどうかもわからないまま(神宮丸太町*に特急止まれとは、本当に思ってるだろうけど / M-8「神宮丸太町に特急止めろ」)「こんな感じがいいんじゃない?」ってメンバーそれぞれが気楽に鳴らす音は、縦が見事に合い、音圧を生み、前後・左右・上下に空間を広げていく。どこまでもパノラマが広がっていくみたい。歌詞までしっかりと聴くと、なんかおかしいんだけど(あれ、海が見えるのに、こいつ多分部屋の中にいるぞ?みたいな)、そんな違和感(癖にもなるし、確実に魅力の一つだ!)、すぐに消し去ってくれるほど、聴いていてウキウキしてくる。
 でも、それ、全部、あいつらの手の上で踊ってるだけ。踊らされているだけ。
だって、一般的な風景描写に見えて、その実すべて、奴らの妄想の中の景色なんだもの。
それに気づいたとき、そら恐ろしくもあったけど、でも、結局思うのはこれ。
「ま、いっか。なんか楽しいし。」
 そんな「歌」のプリミティブな作用に、聴いていると完全に支配されちゃう、極上のポップミュージック。
UFOなんて接近していないのに、「あれ、そこにUFO飛んでない?」って幻を見せる魔法使い(インチキ催眠術師?)が京都にいるんよ。


ライブもすげーよ。ロマンがあるよ。観に来いよ。
 
ーーー 京都livehouse nano店長 / ボロフェスタ主宰 モグラ

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